数十年も頚に痛みを抱え、回らなかった40代女性がいらっしゃいました。特に左に向けることができず、頚や肩の痛みや張りを感じるために45度くらいしか動きませんでした。
頚を硬くした原因に、歯ぎしりが大きくかかわったと思われます。かなりの確率で睡眠中に歯ぎしりをしているそうです。歯ぎしりは歯や顎だけなく、頚に負担をかけてしまいます。それで頚が強く張ってしまいました。
何かのストレス、もしくは顎関節、歯のかみ合わせの悪いことが理由として挙げられますが、私はストレスと忙しさだと思います。とても忙しいご主人様が自宅で仕事をしており、普段の生活の中でかなり気を使っていたようです。身体の痛み、食事、睡眠など心配なことを挙げればキリがありませんでした。
忙しい時には、気が立っていらっしゃったようで、怒らせないように静かにされていたようです。我慢はストレスになり筋肉を硬くします。
おばあさまのお世話をしていたことは忙しさの理由の一つでしょう。おばあさまは1人暮らしですが、元気過ぎるためにお母様もお客様も困ってしまうくらいで、フォローすることが大変だったようです。お住まいは長野県で、月に3~4回通うこともありましたので移動の疲れもあったでしょう。東京にいらっしゃることもありますが、それでもお手伝いしに行くそうです。それが頻繁にあり、やることが多ければ忙しさで身体が張ってしまう訳です。
途中、おばあさまが大腿骨を骨折してしまい、長野を日帰りすることがありました。結局、手術~リハビリをして歩けるようになってしまうのですが、80歳以上で歩けるようになるのは稀有な例です。相当、気を強く持ってリハビリを頑張らないと歩けるようにならないはずですから根性があって気が強い素晴らしいおばあさまです。
ただ、ご家族にとってお世話することがとても大変なことは想像できますね。
ある時には顎がズレて、それ以降、肩の張りが強くなることがありました。当然、顎の施術も取り入れなければなりませんでした。違う日には左の顎が開かなくなると、左の上腕が痛くなりました。頚をしっかりと緩めることが顎、肩、左上腕の問題解決につながりますのでやることは変わりませんが、どうしても時間が掛かってしまいました。
他には膝の痛みが出たり、朝起きたら脚を四の字にしていたことがありました。これは腰や骨盤、脚の問題です。この方は頚周りだけでなく背中や腰、脚にも問題を抱えていたのです。
頚だけでなく全身施術が必要でしたが、私のお客様はこういう方ばかりです。だからこそ、状態が重く症状が強くなり、なかなか治らないのです。このような状態になる前に食い止めねばなりませんが、痛みがないと自分の悪い状態には気づけませんし、気づいたとしても食い止め方がわからないためにこのような状態になってしまいます。
施術を始めて4か月くらい経った時から、この方は鍼を受けていた経験があって、市販の置き鍼とお灸を買って痛いところや気になるところに使うようになりました。それから筋肉の張りが変わって以前と比べてやわらかい状態でいられるようになりました。
以前と比べてやわらかくなったとはいえ、普通の方と比べて十分に硬いのですが、そうなれば施術しやすく効果も出しやすいものです。施術を始めて半年後くらいから身体が安定してきましたから置き鍼とお灸のケアが私の施術の背中を押してくれたことは間違えないようです。
それ以後も置き鍼やお灸を続けていましたが、ご主人様からマッサージをしてもらったこともあったようです。日頃のケアは本当に効果あるんですよ。
お客様ご自身が実感してくださったのは施術を始めて8か月後くらいでしょうか。頚の可動域が拡がってきました。その次の施術は予定が合わずに2か月弱空いてしまいましたが、ずっと頚の調子が良かったと言っていました。
その3週間後はさらに可動域が拡がって右は100%。左は85%くらいですからもう少し。施術する前には3日間ご旅行で毎日10㎞歩いていたそうですから、かなりの負荷があったはずです。しかし、それにも耐えられる身体になってきました。
それでもまだ頚が痛い日、左に頚を向けられない日も稀にありました。それは頚椎やその周りの筋肉がしっかりと改善していないからです。但し、身体はかなり出来上がっていましたからその日の施術で痛みや可動域の問題は解消して、痛みがあっても弱かったそうです。
違う日にも45度しか左に向けない日がありましたが、押してみると良い身体をしていました。施術で頚が動くようになりましたが、どこにも悪い理由が見つかりませんでした。どうもお母様が入院したことが関係あったようで、ストレスが原因でした。
基本的には調子良いものの、調子悪い日がちょくちょくとあって施術して治る。こんなことを繰り返して、施術を始めて1年7か月後。左頚がしっかりと動くようになりました。
初めの3か月で5回来ていただきましたが、その後は月に1回ペース。最初は毎週を3か月、最低でも月に2回来る必要があるお身体でしたからこれだけ時間がかかるのは仕方がありません。それでも通えるペースで続けていただければ痛み改善、可動域拡大して数十年のお悩みも解決できます。
どうしても続けて通う必要がある状態のこともありますから誰でもこのようなケースが通じるわけではありません。しかし、大変な思いをして通っていただかなくても良い方法がないかと私も探していきますので、ご相談いただければと思っています。
1977年生まれ。祖父・父・兄が揃って「整体・指圧・マッサージ」の治療院を開設する、いわばこの世界のサラブレッド。学生時代はスポーツ(ゴルフ)に取り組み、大学卒業後、会社員を経てこの世界へ。
2005年独立開業。以来、からだに触れながら、その背景にある生活スタイルやこころのバランスなどにも目を向けた、トータルケアを心がけている。
平成16年 国家資格 あん摩マッサージ指圧師免許取得(第121762号)